[第20回]絵本学会大会・報告
[第1日目]5月3日(水)
13:00~14:00 記念講演「14ひきのシリーズ」とわたし-(要約)
講師:いわむらかずお(絵本作家)
太田大八さんの思い出
絵本学会20周年おめでとうございます。絵本学会の「がっかい」は、楽しい「楽会」と書くのだと太田大八さんは言われました。太田さんがこのような会を作られたのは、絵本界としては、すごく良いことだったと今思っています。それから太田さんが作られた傑作は日本児童出版美術家連盟(童美連)です。画家の著作権、原画の所有権など、画家や絵本作家の権利を確立してくれました。そんな当たり前のことを、太田さんたち先輩方が一生懸命に闘ってくれたお陰で、今、絵本作家たちは印税がもらえているのだと思います。権利者が自ら主張しないと権利は守られないということを童美連の活動の中から学びました。
14ひきシリーズで伝えたいこと
自慢話になると恥ずかしいのですが、『14ひきシリーズ』は国内外でロングセラーになりました。エリック・カールさんの『はらぺこあおむし』は世界で3千万部くらい出ているそうですが、なぜロングセラーなのか?いろいろ理由があると思います。一つ言えるのは、子どもの読者をたくさん持っているということです。子どもたちからの支持が大切なのです。
『14ひきシリーズ』で何を伝えようとしているのか、作者としてはいろんなことを描き込んでいるつもりです。出版が始まる8年前、14ひきの一家と同じような暮らしをしようと、私は東京を離れて家族と田舎に移り住みました。あれは近代を描いていると言われたことがありましたが、そうではなく、現代に生きる私たちだからこそ向き合わなければならない問題だと思ったのです。都市を離れ、自然のなかで子どもたちと暮らしていると、生きるために必要な基本的な事柄に気付くのです。木々や草花、鳥やカエルや昆虫たち、リスやノウサギなど、生きものたちのいのちの営みを、いつも身近に見ているとたくさんの発見があるのです。
シリーズの中で初めから描きたかったのは、食事のシーンです。食卓を囲んでいる時間が、世代を越え国を越え、家族にとって一番の幸せな時間だからです。『さむいふゆ』の中で私が意識して描き込んでいるのは、自分たちの暮らしをできるだけ自分たちで作るということです。ゲームやソリなど遊び道具、おやつのおまんじゅうなどを作っています。
『おつきみ』はシリーズの中で、特に気に入っています。これを描くとき観察を一生懸命しました。夕方からだんだん夜に向かっていく夕暮れどきの観察、これは絵本ならではの表現に繋がりました。『こもりうた』には、親しくさせていただいた寺島尚彦さんが、曲をつけてくださいました。♪〜ざわわ ざわわ ざわわ〜♪の「さとうきび畑」を作詞作曲した方です。最後にこの「こもりうた」を歌って終わりにしたいと思います。♪〜ね〜む ね〜む ね〜むのき〜♪(要約和田)