[第13回]絵本学会大会
[日程]2010年5月3日・4日
[テーマ]絵・ことば・音
[会場]フェリス女学院大学 緑園校舎(神奈川県横浜市泉区)
[講演]「ことばと絵」講師:谷川俊太郎、特別出演:中川ひろたか
[シンポジウム]原風景の音と絵「ぼくが生まれた音」
パネラー:近藤等則、智内足助
大会報告
2010 年5 月3 日(月)・4 日(火)の2 日間にわたって、第13 回絵本学会大会がフェリス女学院大学緑園校舎(神奈川県横浜市)で開催されました。折しも、フェリス女学院大学は、1870 年(明治3 年)に横浜の地に創立され、今年でちょうど140 年を迎え、その記念すべき年に、絵本学会大会を当校で開催することができましたことを嬉しく思っております。
今回の大会実行委員は、生田美秋、石井光恵、今田由香、竹内美紀、永井雅子、西村醇子、藤本朝巳の7 名でした。その他にもフェリス女学院大学職員、院生〈修了生含む〉、学生(卒業生含む)、地域の絵本勉強会や文庫活動をなさっている方々等の協力を得て、無事大会を終えることができました。ここに、紙面をお借りして一言御礼申し上げます。
今回の大会は、ゴールデン・ウィーク中の開催となりましたが、両日で、実行委員や大学関係者を除き、会員131 名、一般170 名、招待20 名、ボランティア11 名他、のべにすると500 名ほどの方々が参加下さいました。皆様のご協力に心より感謝申し上げます。今大会では、「絵・ことば・音」テーマに、絵本と絵本に関してさまざまな視点から考え、また楽しむことができました。
大会第1日目
大会第1日目は、13 時より開会式が行われ、13 時30 分から「ことばと絵」をテーマに、詩人の谷川俊太郎氏が講演をして下さいました。会は最初、谷川氏が絵本の朗読と解説をして下さり、その後、司会者の生田美秋氏の質問に谷川氏が応える形式で進行されました。後半に、絵本作家の中川ひろたか氏が特別ゲストとして加わって下さり、谷川氏との楽しいトークを展開し、また歌って下さいました。さらに、会の後半で、本学音楽学部教授でテノール歌手の蔵田雅之氏が、谷川氏の歌曲を素晴らしい声で披露して下さり、参加された方から充実した講演会であったとのお言葉をいただきました。
研究発表につきましては、今回も発表者の数が多く、2日間、両日とも3室での同時発表となりました。第1日目は15 時から始ま
り、用意したレジュメの数が不足するくらい参加者も多く、熱気につつまれた研究発表となりました。
研究発表の終了後、絵本学会定期総会が行なわれ、18 時からは、大学カフェテリアで和やかな雰囲気のもとに交流会が行なわれました。おかげさまで、大勢の方々にご参加いただき、盛況の裡に一日目を終えることができました。
大会第2日目
第1日目に引き続き、9 時10 分から研究発表が行なわれました。2 日目も大勢の参加があり、発表は活発に行われました。その後、11 時からのシンポジウムでは、「―原風景の音と絵―『ぼくが生まれた音』」と題して、パネラーに世界で活躍されているトランッペット奏者であり、音楽プロデューサーの近藤等則氏と、現代美術
画家の智内兄助氏をお迎えしました。司会は、お二人と同じ瀬戸内海生まれという長野ヒデ子氏が務めて下さいました。(内容については後の報告をご参照下さい。)
昼食後、13 時15 分からは、展示室と同一会場で作品発表がありました。発表者が自作の絵本を前に発表する形式を取りましたので、参加者と発表者の間で活発な意見が交換されました。なお、今回、研究発表者や催しも多く、作品発表と次のラウンドテーブルの時間が一部重ってしまい、関係の方々に、それぞれ充分な時間を差し上げることができませんでした。今後、会の運営については、理事会、次回以降の大会事務局で検討させていただくことになりました。
14 時30 分からは、ラウンドテーブル(R1、R2、R3)が3つの会場で行なわれました。R 1では、「絵本におけることば」をテーマとし、話題提供者には、児童文学研究者の松居直氏をお迎えしました。また、演奏者として、本学音楽学部教授の宮本とも子氏が参加下さいました。コーディネーターは大会実行委員長の藤本朝巳が務めました。松居氏のお話の前半終了後、宮本氏がクラヴィコードの演奏をして下さり、チャペルの中で、静寂と沈黙という貴重な経験をしました。その後、松居氏が、『おおきなかぶ』、『三びきのやぎのがらがらどん』などを例に挙げ、絵本のことばの素晴らしさ、子どもが受け入れ共感することばについて語って下さいました。こ
の会場には、会員以外の大勢の方々にご参加いただきました。
R2 のテーマは「子育て支援」でした。話題提供者には、障害をかかえる子どもたちも含め、多くの子どもたちに幅広く文庫活動をなさっておられる、東京布の絵本連絡会代表・すずらん文庫の渡辺順子氏、ノンフィクション・写真絵本作家であり、フォトジャーナリストとしてご活躍中の大塚敦子氏をお迎えしました。コーディネーターは大沼郁子氏が務めて下さいました。最初に、大沼氏が、「病児の不安を緩和するための絵本形式入院パンフレット」の制作について、次に大塚氏が、著書『わたしの病院、犬がくるの』の制作を中心にお話されました。最後は、渡辺氏が、布の絵本を中心に、子どもたちに伝えてきたぬくもりとは何だったのかについて報告をさ
れました。その後、会場の方々を交えて討論が行なわれました。絵本の力や可能性が再確認できるラウンドテーブルとなり、終了後も、話題提供者に直接質問に行かれる参加者が相次ぎました。
R3 では、「オノマトペ」と題して行なわれました。話題提供者は、武蔵野大学教授の宮川健朗氏、大会実行委員の石井光恵氏、コーディネーターは理事の今井良朗氏が務めて下さいました。石井氏は実際に絵本を手に、絵本における、いろいろオノマトペを紹介され、日本の絵本がオノマトペの宝庫であること、また、オノマトペの楽譜性について説明されました。一方、宮川氏は、オノマトペは自然界の音に言語音を貼り付けるという言語観でなく、ある種見立てなのではないか、という考え方を示されました。会場では、今井氏の司会により、フロアーからも活発な意見が出されました。(各テーブルの詳しい討議の様子については、後の報告をご覧下さい。)
また、今回の絵本学会大会では、会期中、長野ヒデ子氏の絵本原画展、大塚敦子氏の写真絵本展が同時開催されました。会場には両日とも大勢の方が入場して下さ
り、両氏のご協力に心より感謝申し上げます。
ラウンドテーブル終了後、16 時30 分から閉会式が行われ、中川素子会長の閉会宣言で、二日間にわたる絵本学会大会を無事終了することができました。
なお会期中、会場の表示や誘導、開催時間などにつきまして何かと至らない点もあったかと存じますが、大きな問題がなく無事終了できましたことを、会の企画運営に初めから関わって下さった理事一同及び実行委員一同より、お礼申し上げます。また大学教職員、ボランティアの方々、研究発表者、作品発表者、その他大会に関係して下さいました全ての方々に心から感謝申し上げます。