絵本学会

[第6回]絵本学会大会

[テーマ]絵本と絵本美術館
[期間]2003年6月14日(土)15日(日)
[会場]主会場岡谷市カノラホール(岡谷市幸町8-1)
   分科会会場生涯学習館(仮称/岡谷市中央1-11-1)
 
○プログラム
 2003年6月14日(土)◆第1日◆
  13:00 受付開始
  13:30 開会式
  14:05 基調講演  ブライアン・ワイルドスミス(イギリス)
  16:00 シンポジウム 絵本と絵本美術館
      いわむらかずお絵本の丘美術館ー岩村和朗(絵本作家)
      安野光雅美術館(島根県・津和野町)-大矢鞆音(館長)
      イルフ童画館(長野県・岡谷市)-二木六徳(名誉館長)
      安曇野ちひろ美術館(長野県・松川村)-松本猛(館長)
      *コーディネーター-香曽我部秀幸
  18:30 懇親会
  20:30 懇親会終了
 
 2003年6月15日(日)◆第2日◆
   9:00 受付開始
   9:15 研究発表+作品発表
  12:15 総会受付
  12:30 2003年度絵本学会総会
  13:30 ラウンドテーブル(分科会)開始
     R1 絵本作家研究[武井武雄の世界]コーディネーター:棚橋美代子
     R2 絵本と地域活動[絵本美術館の楽しみ方]コーディネーター:酒井倫子
     R3 絵本受容研究[絵本を結ぶ 絵本と遊ぶ]コーディネーター:越高一夫
  15:30 閉会式
 
● オプショナル・ツアー
○イルフ童画館特別鑑賞会(6月14日・土 10:00-12:00)
○長野県の絵本美術館めぐり(6月13日・金)
  Aコース 諏訪・八ヶ岳コース(岡谷集合)
   八ヶ岳小さな絵本美術館→原田泰治美術館→小さな絵本美術館
  Bコース 安曇野コース(松本集合)
   絵本美術館・森のおうち→安曇野ちひろ美術館
  Cコース 軽井沢コース(軽井沢集合)
   軽井沢絵本の森美術館→ル・ヴァン美術館
○絵本美術館めぐり参加希望者は、下記旅行代理店へ5月末までに直接お申し込みください。
 〒394-0028 長野県岡谷市本町2-6-36
  南信旅行(株) TEL0266-23-6245  FAX0266-23-0029
 (ただし、各コースとも中型バス人数に達しない場合は、中止となります。)

大会報告

第6回絵本学会大会実行委員長 竹迫祐子
 

2003年6月14日(土)~15日(日)、長野県の岡谷市で、「絵本と絵本美術館」を大会テーマに、絵本学会、岡谷市、イルフ童画館主催で、第6回絵本学会大会が開催されました。今日、日本の各地には30館を越える絵本美術館がありますが、この「絵本美術館」という存在は、日本に特徴的な存在で、欧米各国ではドイツのトルイスドルフ絵本美術館や昨年11月に開館したアメリカのエリック・カール美術館を見るのみといわれています。このきわめて日本的な存在である「絵本美術館」とは何か?絵本の発展に、絵本美術館が果たす役割は何か、という問題意識が今岡谷大会のテーマに繋がっています。周知の通り、長野県は全国でも2番目に美術館が多い県ですが、絵本美術館も例外ではありません。日本の絵本美術館の半数近くが、長野県と八ヶ岳、清里、軽井沢等に集中しています。会場となった岡谷は、童画のパイオニア武井武雄が生まれたところ。1997年に武井武雄の業績を記念して、イルフ童画館が作られました。
 また、今大会は、絵本学会の会員を中心に、地元岡谷の保育園長会、母親文庫連絡会や図書館関係者に市の職員を含め、岡谷市を上げて市民参加の実行委員会体制で取り組まれました。多くの実行委員にとってははじめての体験故に、行き届かないところも多々で、実りある2日間の大会を終えることができました。
 大会一日目は、岡谷市のカノラホールで開催されました。心配された雨が案の定、大会開始直前に降り出し、一時はどうなることかと関係者一同気を揉みましたが、参加者の出足に響くことなく、無事に大会をスタート。まず、はじめに、大会実行委員長林新一郎岡谷市長、絵本学会三宅興子会長の挨拶で幕を開けました。
 基調講演は、絵本学会大会はじめての海外からのゲスト、イギリスの絵本画家、ブライアン・ワイルドスミスさんが登場。松下宏子さんの通訳で、大会テーマの「絵本と絵本美術館」と題して、自らの絵本作りや、絵本についての考え方を講演してくださいました。冒頭、両手を使っての絵のパフォーマンスに、会場はびっくり。なごやかな中に基調講演が行われました。
 本美術館から、岩村和朗さん(いわむらかずお絵本の丘美術館・栃木県馬頭町)、大谷鞆音さん(安野光雅美術館館長・島根県津和野町)、二木六徳さん(イルフ童画館名誉館長・長野県岡谷市)、松本猛さん(安曇野ちひろ美術館・長野県北安曇郡松川村)が揃い、コーディネーターの香曽我部秀幸さんの進行で、シンポジウムが行われました。
 大会一日目の盛り沢山のプログラムの締めくくりは、ホテル岡谷で開催された懇親会。この席には、ワイルドスミスさんや、伊豆のワイルドスミス絵本美術館の野村道子さん、シンポジウムに登壇してくださった絵本美術館の方々、林岡谷市長や三宅会長をはじめ、総勢70名が参加、楽しいひと時を楽しみました。席上、全国にその名が轟く岡谷太鼓の鼓楽響楽舎のみなさんが熱演。お腹の中まで響き渡る迫力のある演奏に、会場もしばし心を奪われました。
 翌2日目は、会場を岡谷市生涯学習館・イルフプラザに移し、午前中は研究発表、ワークショップ、作品発表、午後は3つのラウンドテーブルが行われました。また、お昼には絵本学会第6回総会が開催されました。
 研究発表は、AB2室に別れて15名による8テーマの発表が行われました。また、同時刻に「武井武雄デザインを学ぶモビール作り」と「武井武雄も学んだ「からくり玩具」を作ろう」という2つのワークショップも開催。岡谷市在住の子どもたちをはじめ、全国の親子がそれぞれ40人参加し、武井武雄の仕事からその感性を学びつつ、楽しい制作のひと時を過ごしました。中には、見ていても真剣そのものというまなざしの子どもたちに混じって、一緒に来たお父さんが夢中になって制作に取り組む姿も見られ、その熱気がほほえましく伝わってきました。
 会場の中央スペースでは、エスカレーターを挟んで、作品発表とブックフェアが開かれました。作品発表は、絵本学会運営委員の笹本純さん、加持ゆかさんの司会進行で、9名の方々の発表が行われました。パネルに掲示された自作を前に、それぞれがコンセプトや苦労した点などを説明すると、会場からもさまざまな質問や意見が出され、和やかな中にも熱気のこもった作品発表が続きました。
 一方のブックフェア会場には、今大会に参加された絵本作家の方たちの絵本が揃い、一角には作家によるサイン会場が設けられ、ブライアン・ワイルドスミス氏や岩村和朗さんが昨日に引き続き登場したのをはじめ、ラウンドテーブルに参加される浜田桂子さんや西内ミナミさんも参加。 「今朝、新聞を見て飛んできました」という岡谷の方を含め、列を作る大勢のサイン希望者に対応していました。また、絵本の読み聞かせコーナーも開設され、多くの子どもたちの人気を集めていました。
 早めのお昼を済ませて、午後12時からは、絵本学会2003年度総会が持たれました。
 午後からはいよいよ大会の最終プログラム、絵本作家研究「武井武雄の世界」、絵本と地域活動「絵本美術館を楽しむ」、絵本受容研究「絵本を結ぶ 絵本と遊ぶ」の3つの ラウンドテーブルが持たれ、各会場とも積極的な論議が行われました。
 本大会では、2日間に渡ってはじめて託児が行われましたが、これは岡谷市の保育園長会の全面的なご協力を得て実現したものです。実際にお子さんを預けて、大会に参加された方は9名でしたが、発表をする側にとっても、発表を聴く側にとっても、小さな子どもを持つ親にとっては深刻な問題である託児が、実現できたことは、大きな前進だったと思います。反面、当初予定をしていました長野県下の絵本美術館を回るオプショナルツアーが、最低実施人数に満たず、実現しませんでした。なおかつ、旅行会社の不手際で、ツアーの参加申し込みをされた方に中止のご連絡が行き届かず、ご迷惑をお掛けいたしましたこと、謹んでお詫び申し上げます。ツアーは実現しませんでしたが、この大会を機に、絵本美術館森のおうちを中心に作成された絵本美術館マップと付属の割引券を活用して、大会翌日、近隣の絵本美術館を回られた方もあったと聞いています。
 大会前日から撤収に至るまで、延べ144名のボランティアの力を借りて、この大会が実現しましたことを、感謝をこめてご報告しておきます。

(文責:竹迫祐子)