[第8回]絵本学会大会
[テーマ]絵本とアニメーション
[期間]2005年6月11日(土)12日(日)
[会場]京都造形芸術大学(〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2-116)
[参加費]会員1000円 、一般2000円(前払い1800円 ※郵便振替にて6月3日まで)、学生(中・高・大・専門学校生)1000円
[主催]絵本学会、京都造形芸術大学(比較藝術学研究センター/芸術教育研究センター・こども芸術大学)
[後援]朝日新聞社京都総局・京都新聞社
[大会1日目]6/11 (京都芸術劇場「春秋座」にて)
12:30 受付開始(「春秋座」前)
13:00 開会式
13:30 イシュトバン・バンニャイ講演会
通訳:栗岡史歩
15:00 シンポジウム「絵本とアニメーション」
林静一[アーティスト]
スズキコージ[イラストレーター、絵本作家]
岩井 俊雄[メディアアーティスト、東京大学先端科学技術研究センター特任教授]
コーディネーター:中川素子[文教大学]17:30 絵本学会2005年度総会
19:00 交流会(於:ホリディイン京都)
大会報告
第8回絵本学会大会実行委員会副委員長 佐藤博一
■2005年6月11日(土) ・12日(日)の2日間、京都造形芸術大学を会場として第8回絵本学会大会が「絵本とアニメー ションjをテ ーマに開催されました。 本大会は、京都造形芸術大学に設立されて間もない比較事術学研究センターならびに芸術教育研究センター ・ こども芸術大学を共催とし、 朝日新聞社京都総局、京都新聞社に後援を依頼、芸術大学 が会場となるに相応しい各種の企画を立ち上げ、絵本学会大会を盛大に開催すべく準備を進めておりました。 しかしその思いとは裏腹に、細部の決定に時間がかかり、会員のみなさまへのご案内が遅れがちとなったことをお詫び、申しあげます。 そういった不手際にもかかわりませず、多くの会員のみなさまにご参加し、ただき、本当にありがとうございました。
■大会第1日目は京都芸術劇場「春秋座」をメイン会場として、京都造形芸術大学学生の和太鼓サークルによる演奏で開会式の幕を聞け、今井良朗会長による開会宣言の後、開催校を代表し、田名網敬一実行委員長がご挨拶申しあげました。 続いて、本大会のために初来日していただいたニュ ー ヨ ーク在住のイラストレ ーター、イシュトパン ・パンニ ャイさんによる講演が始まりました。 雑誌のイラストレーションといった商業的な仕事が日常だとすると、絵本やアニメーションの制作は、パンニャイさんにとって仕事の制約から解放された時聞を過ごすことでもあります。 表現に覚醒した幼少のお話から現在の創作活動まで、実に丁寧に講演を進めていただいたように思います。 事前に豊富な資料(投映用の画像データ)をご用意いただき、講演会での上映準備も万全で、はありましたが、 突然の機材トラブル(後日、舞台と映写室を繋ぐケ ーブルの断線と判明しました)に対応が間に合わず、予定されていた手順で満足なプレゼンテーションをしていただけなかったことが悔やまれます。 しかし、そのような状況でも終始、熱弁をふるっていただいたパンニャイさんの人柄に直接、触れられたことは貴重な経験でした。 また、 今回の来日を機に、名作『ZoomJ の日本版が復刊されたことは特筆すべき事柄であり、ここにも絵本学会の活動意義を感じました。
■休憩後は、本大会テーマである「絵本とアニメーションj をめぐり、パネラーに絵本作家のスズキコ ージさん、アーテイストの林静ーさん、 メディアアーテイストの岩井俊雄さんをお招きし、中川素子さんをコ ーデイネーターとしてシンポジウムが行われました。 スズキさんの強烈な個性と、岩井さんの斬新なアイデアと表現性、林さんの豊富な知識がこのシンポジウムの時間を短く感じさせ、三者三様、 全 く別の表現の方向性をもっ個性的なクリエイター3名をまとめられた中川さんの手腕に対しても、会場の満足度は非常に高かったように感じます。 パネラー各氏には、本大会の企画として、スズキコ ージさんには作品展示とライプペインテイングを、岩井俊雄さんには任天堂に働きかけていただき、『エレクトロプランクトン』の体験会実施を、林静ーさんにはアニメーション上映会への参加をお願いし、来場者の好評を博しました。
■上述のように、本大会ではパンニャイさんとスズキコ ー ジさんの作品展示を、学会当日を含む6月1日から6月19日まで新設のギャルリ ・オー ブで、また、作品発表者のみなさんにご了解を得て、 地下のデイーズギャラリーでも同会期に「絵本学会会員作品展jを開催させていただきました。 ギヤルリ ・オーブではスズキ コージさんのライブペインテイング(写真)が行われた9日から大会当日までをピークに会期中4,866名の入場者がありました。 ディーズギャラリ ーの「絵本学会会員作品展Jも1,746名の方に見ていただきました。大会当日は他にも、 デイーズギャラリー横の映像ホールでアニメ ーション上映会(参加作家:林静一、イシユトパン・パンニャイ、クオン ・ユンドク、 田名網敬一、相原信洋)の実施、 カフェ核のラウンジにはニンテンドーOS fエレクトロプランクトンj体験コーナーを設置(協力:任天堂株式会社)、また、 本学こども芸術大学主催のワ ークショップ、 施設見学会、 株式会社大垣書店によるブ ックフェア(市内2店舗では5月中旬から大会広報とともに開始、 6月14日まで)、 サイン会、 学会関連資料販売、 カスチョールの会(ロシア青少年文学 ・ 文化研究会)による書籍と物品販売、京都家庭文庫地域文庫連絡会による「赤ち ゃん絵本読書会記録」 販売が行われました。
大会第1日目のシンポジウム終了後、同会場で絵本学会2005年度総会が行われました。 また、 夜にはホリデイイン京都で交流会を実施、 太田大八さんの乾杯ご発声の後、 終始なごやかに参加者とゲストパネラーとの歓談が進み、 予定していなかったスズキ コージさんと長谷川集平さんのスペシャルライブにパンニャイさんも加わるなど、参加者に とっては至福の時間となりました。
■翌大会第2日目の午前中は3室に分かれ、 研究発表が行われました。 A室は佐々木宏子さん、生田美秋さんを進行役に6テーマ、 B室は三宅輿子さん、竹迫祐子さんを進行役に5テーマ、C室は今井良朗さん、加持ゆかさんを進行役に5テーマ、計16テーマの発表があり、意義のある発表内容と 活発な質疑応答に各室とも熱気あふれる様子でした。当日、 実行委員会スタッフは受付対応と各企画運営もあり、 各室には機材操作1名と会場記録l名が配置されていましたが、 発表中の配布資料管理の担当としてもうl名、 増員すべきだったと反省しています。 発表者のみなさんには、事前の機材チェック等、 準備時間に十分な時聞を確保できなかったことをお詰び致します。
■昼食後は2室に分かれ、作品発表が行われました。 作品 を展示中のギャラリーとは異なるフロアでしたが、展示空間と口述発表場所とを分け、研究発表と同じ会場セッティングで作品発表を行ったことは、 活発な議論と質疑応答を招く結果となり、今後の作品発表の活性化ならびに作品発表者の充実感に繋がるのではないかと思っています。 作品 発表A室の進行は笹本純さん、 B室の進行は香曽我部秀幸さんにお願いしました。
■最後のプログラム、 ラウンドテープル(分科会)はR1「モンター ジ ユー絵本と映像の表現性ー」、R2「作家研究/デイツク ・ ブルーナ」、R3「美術館とこどもの教育ー絵本の果たす役割J、 と、 どれも興味深いテーマが設定され、 各室 とも今後の絵本研究にとって重要な継続性がそれぞれのテ ーマに見いだされるなど、 たいへん有意義なものとなりました。 RIの話題提供者は美術家、 グラフイツクデザイナー の田名網敬ーさん、 絵本作家の長谷川集平さん、 コーデイネーター は私、佐藤博ーが務め、 R2の話題提供者は、(株)デイツク ・ ブルーナ ・ ジャパン代表取締役社長の字野勉さん、 朝日新聞編集委員の森本俊司さん、 オランダ語翻訳家の野坂悦子さん、 コーディネーターは元・ サントリ ーミュージアム天保山の今井美樹さんにお願いしました。 R3の話題提供者は北海道立近代美術館学芸員の浅川真紀さん、 高知県立美術館学芸員の影山千夏さん、 コーデイネーーとしてミュージアム ・ エデュケ ーション ・ プランナーの大月ヒロ子 さんに来ていただきました。
大会2日日夕刻、 活発な議論の余韻がただよう分科会会場で、今井良朗会長による閉会宣言が行われ、 2005年第8回絵本学会大会は閉会しました。
■本大会では実行委員会によるアンケート調査が実施されました。参加したプログラムと感想を記入する無記名式のものですが、 回収率は低いものの、当日のプログラムをゆとりあるものにしてほしい、 といった要望も明記されており、いくつかは次固までに検討し、解決を試みる必要性が 見られます。
■思い起こせば、 昨年秋の時点では開催校の正会員は私ただ一人、実行委員会の設立自体が困難とも思われましたが、 開催決定を機に本学教職員4名が新入会員となり、 田名網敬ーを委員長とする実行委員会組織が無事に結成されました。その後、 客員教授としてお越しいただいている中川素子先生の暖かい励ましとご尽力、学会事務局による綿密なサポー ト、 運営委員のみなさまによる要所での的確なご指導をいただき、準備が進み、 開催当日を迎えることとなり ました。本大会の参加者総数は473名でした。ご支援いただいた関係各位、実行委員、 ボランテイアスタッフとして参加してくれた職員、 学生に心から感謝申しあげます。次回以降の大会も盛大に、より充実したものとなるよう、 祈念いたしております。