太田大八さんのご逝去を悼んで
8月2日、太田大八さんが97歳の生涯を閉じられました。
太田さんは、絵本作家として数々の傑作を残されたことは言うまでもないことですが、同時に、長きにわたって日本の絵本界のオピニオンリーダーであり、絵本画家の権利を守る活動の中心的役割もはたされてきました。
絵本学会に関しても、太田さんは設立のきっかけを作ってくださった人でした。1990年代に太田さんが編集人代表をなさっていた季刊誌「PeeBoo」は、絵本画家を中心に絵本とは何かを論じ、絵本評論や技術論も含めて絵本の考察を続けてきました。そのなかに「絵本学」というページがあり、そこで中川素子さんが「絵本学会を」と声を上げたのです。そこから次第に輪が広がり、太田さんも参加する絵本学会設立準備委員会が作られました。太田さんは、その中で画家だけではなく編集者や、文章を書く作家や、研究者や、絵本を普及する側の多くの人々が集う絵本フォーラムの必要性を説かれました。絵本学会が絵本に携わる幅広い人々に門戸を開いているのは太田さんの考えが反映されているからです。
太田さんは絵本学会の最初から理事として学会の運営にかかわっていただき、学会の発展のために最後まで尽力してくださいました。
絵本学会は太田さんの絵本への熱い思いを受け継ぎ、絵本の発展のために活動してゆきたいと思います。生前のご尽力に感謝し、謹んでご冥福をお祈りいたします。
絵本学会会長 松本 猛