絵本学会

文化の違い〜?!
武田美穂

図1 ますだくん表紙

ここ最近で、わたしの二冊の絵本がフランスで出版される運びとなりました。
今までアジアからはお声がかかっても、欧米はまったくなかったので、これはかな~り!うれしい!!
ーーが。エージェントを通して先方とやり取りしているうちに、存外いろんなハードルが、、、。
 
いわゆる文化の違い、というやつですか?一冊目、『となりのせきのますだくん』。(わたしが絵本作家としてゴハンが食べられるよ
うになったきっかけを作ってくれた本です)
原色・補色をぶつけるような色使いが好きで、この本の表紙もキミドリのカイジュウに赤バック、さらにそれを囲む地色はクリスマスグリーン、と、自分的に王道で心地よいテイスト満載。
武田美穂自慢の色使いだったんですが、フランス側から提示されたのは、バックがすっかり枠ごと取り払われ、アナ・スイか!?というような、渋いテイストの濃いパープルが敷かれた表紙!
 
えっ!!ちょいまち!これは何故!?「フランスではそのほうが売れるのです」。(ビシッ)うーーーーーん。
 
売れるという言葉にめちゃくちゃ弱いわたし、PCの画面をつくづく眺め、さらにプリントアウトして、つくづくと眺めたのですが、どうにも納得できず。やはり原本に合わせてほしいと申し出たところ、そこはあっさりOKしてくれました。が、自分の中にまったく無い色合わせに、ちょっとしたカルチャーショックを味わいました。(図1 ますだくん表紙)
 
そのほかにも本文レイアウトで小さく揉めて首をひねることもあったけど(逆版ですからね。日本の漫画文化も今や世界を席捲してるんだから、右開きでも読めるようになってくれー)調整し、出版までこぎつけました。見本を手にしたときはしみじみ嬉しく、読めないフランス語のページを何度も捲りました、、、。
 

図2

図3

二冊目は『こわいドン』。わたしの作品には描き文字と絵が一体化しているものが多く、この本は特に複雑に絡んだページがあるのです。
自著としては、3番目に好きな本なので、有り難いけど、、、よくこれを出版する気になったなあ、みたいな?編集者と相談して、本当に違和感なくできるのか、まずはコンセンサスをだしてもらおう、ということになりました。半ば不安、半ば期待で待っていたら、意外と早くコンセが来て、、、これは、マジ、うーん!やるなあ!と唸るようないい出来でした。(図2・3 日本版とフランスグッジョブの絵)

図4・5

難しい画面を丁寧に、PCではなく手描きで描き起こしてくださったのには、本当に頭が下がりました。こうして一番の懸案事項はすんなりクリアしたので、出版に向け本格的に動き出すことに!!、、、、し、しかし!またも表紙で引っかかりました。(図4 日本版 こわいドンの表1)
 
バックのオレンジがすっかり取り払われ、白地にシンプルな文字の並ぶシックなものに様変わりしてでてきたのです。
なぜ~!?日仏というわけではなくて、わたしとフランスの間に大きな暗い川が流れている!?編集者に聞いてもらうと、やはり、「フランスではそのほうが売れるのです」。
 
またもPC画面をつくづく眺め、プリントアウトしてつくづくと眺め、「まあ、、、白バックは、アリかな、、、」。
ですがシンプルすぎるタイトルとその周辺にもうワンテイスト欲しい。「オシャレな本が作りたいわけじゃあなく、ちょっと煩雑でも元気よくて、はみ出た感じでいきたい。それが武田の作家性です」と、代案ラフとともにお返事してもらいました。
お互いの主張の真ん中をとった形ですが、フランス側も誠実に対応してくれて、最終的には納得のいく表紙になりました。(図5 ありがとうフランスの絵)
 
それにしても二冊の表1の、キャラクター以外総とっかえは、結構ショックでしたね。
そりゃデザインのセンスが良い方じゃないけど、でも、日本の子どもたちに向けて、アイキャッチのいい、見て心踊る絵作り、タイトル作りを心がけてるんだけどなあ。うーむ。いやほんと、むずかしかったなー、でもいい経験させてもらいました!と思った、わたしのフランス初進出でした。

図 6・7 こわいドン日本版とフランス版の絵

余談。『こわいドン』はすべての作業が終了し、もうすでに印刷段階ですが、「武田さーん」と、担当編集者。「ごめんねえ。アベノミクスのせいかなあ?レートの問題で、苦労した割に、かなり!!!!印税が安いんだよね」、、、、ちくしょー!アベめ!!